財前の前に立ちはだかる東貞蔵教授と、財前が唯一心を許すバー「ラ・セーヌ」のママ・花森ケイ子の配役も、各世代で強烈な光を放っています。
東教授役において、2003年版の石坂浩二が見せたプライドと嫉妬心の葛藤は特筆に値します。愛弟子・財前の才能を認めつつも、その不遜な態度に激しい嫌悪を抱き、教授選で他大学からの刺客を擁立しようと画策する姿は、組織社会の人間関係の縮図として視聴者の共感を呼びました。1978年版の中村伸郎、2019年版の寺尾聰も、重鎮医師としての風格と老境の哀愁を見事に演じ分けています。
一方、愛人の花森ケイ子役は、単なる愛人関係を超えた「財前五郎の魂の理解者」でなければなりません。1978年版の太地喜和子は、圧倒的な色香と包容力で財前を包み込み、伝説的な名演を残しました。2003年版の黒木瞳は、知性と凛とした美しさを兼ね備えた大人の女性像を好演。2019年版の沢尻エリカも、財前の野心を冷静に見つめる艶やかな存在感で強い印象を刻みました。