back numberのフロントマンである清水依与吏が紡ぐ言葉は、日常に埋もれる微細な感情を容赦なく抉り出します。『ハッピーエンド』というタイトルでありながら、描かれているのは「相手を困らせないために、嘘の笑顔で別れを受け入れる女性の独白」です。
「今すぐ抱きしめて 私がいれば何もいらないと そう言ってほしい」と心の中で絶叫しながら、現実には「嘘だよ さよなら」と告げて背を向ける歌詞の構成。この痛々しいまでの二面性を、唐田えりかはセリフの一切ないMVの中で、視線と口元の揺らぎだけで具現化しました。
ファンの間で聖地として語り継がれる「ハッピーエンド MV ロケ地」も、物語の説得力を高める重要なファクターとなっています。撮影の舞台となったのは、特別な観光地ではなく、東京都内近郊の何気ない住宅街、年季の入ったアパートの一室、夕暮れ時の歩道橋、そして生活感の漂うスーパーの帰り道でした。
「どこにでもある部屋で、かつて二人が笑い合っていた記憶」がインサートされるからこそ、部屋に一人残された唐田えりかが流す大粒の涙が、視聴者自身の過去の失恋と重なり合います。作り込まれたドラマチックなセットを排し、生活の延長線上にカメラを置いたリアリズム演出が、彼女の飾らない表情を極限まで引き出したと言えます。