映画館からテレビへと大衆の娯楽がシフトしていく中、悪役たちの主戦場は時代劇へと広がっていった。『水戸黄門』や『暴れん坊将軍』に代表される国民的ドラマにおいて、彼らはなくてはならない存在だった。越後屋と悪代官の密談、町娘を追い詰める浪人集団、そしてクライマックスの大立ち回り。視聴者は「待ってました」と言わんばかりに悪漢たちの悪巧みに憤り、成敗される瞬間に快感を覚えた。
特筆すべきは、斬られ役の卓越した身体能力だ。主役の太刀筋をより鋭く見せるため、刀の軌道に合わせて自ら跳躍し、美しく畳の上に崩れ落ちる。ただ倒れるのではない。痛みを全身で表現しながら、主役の美学を際立たせるための完璧な間を創り出していた。彼らの正確無比なリアクションこそが、時代劇黄金期の様式美を支えていたのだ。