五代目 尾上菊之助の父は、重要無形文化財保持者(人間国宝)であり、現代歌舞伎の最高峰として君臨し続ける七代目 尾上菊五郎である。粋でいなせな江戸前の世話物から風格漂う時代物まで、肩の力を抜きながら舞台を支配する父の至芸。菊之助はその背中を物心ついた頃から見つめ、薫陶を受け続けてきた。母は昭和の大女優である富司純子。芸道に生きる覚悟を家庭の内側から支え抜いてきた母の美学もまた、息子の立ち居振る舞いに深い品格を与えている。
そして忘れてはならないのが、実姉である寺島しのぶの存在だ。ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)をはじめ、国内外で数々の栄冠を手にしてきた彼女は、歌舞伎の家に生まれながら女優としての道を切り拓いたパイオニア。寺島しのぶの長男である尾上眞秀(寺島眞秀)もまた歌舞伎の舞台で瑞々しい才能を開花させており、音羽屋を取り巻く表現者のネットワークは国境やジャンルを越えて広がり続けている。