水谷智美の作品を語る上で欠かせない概念が「養器(ようき)」である。彼女にとって、窯から出てきたばかりの器は未だ完成品ではない。使い手の手に渡り、日々の食卓で料理が盛り付けられ、洗われ、使い込まれる過程を経て、初めて器としての命が吹き込まれると考えている。
使う。
育てる。
変わる。
このサイクルの美学である。
時間の経過と料理が織りなす経年変化の魅力
ザラついた表面の石肌は、使い込むうちに料理の油脂分や手の油分を徐々に吸収していく。数年使い続けた器は、当初の尖ったマット質から、しっとりと濡れたような光沢と滑らかな手触りへと変化する。経年変化を「劣化」ではなく「成長」と捉える日本の侘び寂びの精神が、ここに見事に体現されている。