自転車小売業という極めてドメスティックかつ利幅の薄い領域で、なぜあさひだけが飛び抜けた成長を遂げられたのか。その核心は、浅山氏が推し進めた「SPA(製造小売)モデルの導入」と「徹底した現場主義」にあります。サイクルベースあさひの沿革を振り返ると、同社が急成長を遂げたターニングポイントが鮮明に浮かび上がります。
1990年代初頭までの自転車業界では、問屋を介した仕入れが常識であり、中間マージンが嵩む構造になっていました。そこで浅山氏は、自社で企画・設計を行い、海外の協力工場に直接生産を委託するプライベートブランド(PB)の開発に乗り出します。企画から販売、点検修理までを一気通貫で手掛ける仕組みを構築したことで、高品質でありながらリーズナブルな価格設定を実現し、高い利益率を確保することに成功しました。
経済番組『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)に浅山克己氏が出演した際、大きな反響を呼んだのが「売りっぱなしにしない」という現場哲学です。スーパーやネット通販との最大の差別化要素として、国家資格である自転車安全整備士を全店に多数配置し、「他店で購入した自転車でも喜んで修理する」というオープンな修理受託方針を徹底しました。顧客が困ったときに頼れる場所として信頼を獲得し、買い替えの需要を自社店舗へ強力に囲い込むビジネスモデルは、流通関係者からも絶賛を浴びました。このブレない戦略が実を結び、2004年のJASDAQ上場からわずか数年で東証一部(現プライム市場)上場へと駆け上がったのです。