アリアの歴史を語るうえで外せないのが、17世紀イタリアで大流行したダ・カーポ・アリアだ。A-B-Aという三部形式で、最初のA部分を最後に繰り返す構造を持つ。歌手にとっては装飾音を自由に加えられる見せ場であり、カストラート(去勢歌手)たちが超絶技巧を競った。ヘンデルのオペラにはこの形式の名曲が多い。
18世紀後半になると、モーツァルトがアリアの可能性を大きく広げた。『フィガロの結婚』の「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」や『魔笛』の「夜の女王のアリア」は、登場人物の心理を驚くほど精緻に描き分けている。19世紀のロマン派では、ヴェルディが『リゴレット』の「女心の歌」、プッチーニが『トゥーランドット』の「誰も寝てはならぬ」など、ドラマと一体化したアリアを生み出した。アリアは単独の名曲としてコンサートでも演奏されるようになり、オペラ全体を知らなくても楽しめる音楽用語へと変化していった。