闘病の後半、世界に衝撃を与えたのがYouTube(最後の闘魂チャンネルの開設だった。かつてリング上で無敵を誇ったスターが、頬をこけさせ、経鼻チューブを装着し、リハビリで声を絞り出す姿をそのまま配信したのである。一切の美化や演出を排した生々しい映像は、従来の芸能人やスポーツ選手の闘病記とは一線を画していた。
かつてNHK BSプレミアムが制作したドキュメンタリー番組などでも、病床の猪木に密着した映像が放送され、大きな反響を呼んだ。画面に映し出されたのは、痛みに顔を歪めながらも「オイッ!」と拳を握り直す老戦士の姿だった。衰退を隠すことが美徳とされがちな日本社会において、老いと病の残酷さを白日の下に晒し、それでも生きる意志を鼓舞するその態度は、視聴者に強烈な倫理的・感情的揺さぶりを与えた。