1975年に製作され、翌1976年に一般公開された映画『ソドムの市』は、公開直後から激しい拒絶反応にさらされました。イタリア本国では公開からわずか数日で上映差し止め命令が下り、イギリスでは英国映画分類委員会(BBFC)によって2000年代に入るまで25年以上にわたり劇場公開・ビデオ販売が全面的に禁止されました。さらにオーストラリア、ニュージーランド、西ドイツなどでも長期間にわたり輸入や配給が禁じられる事態に発展しています。
これほどまでに徹底した排除を受けた最大の理由は、未成年と設定された少年少女に対する、尊厳を徹底的に破壊する暴力・性的虐待・スカトロジー描写にあります。四人のファシスト権力者(大統領、公爵、最高裁判所長官、司教)が十代の若者たちを拉致監禁し、絶対的服従を強要しながら理不尽な欲望の捌け口にしていく過程は、当時の各国の公序良俗基準を根底から逸脱していました。
日本国内においても、映倫(映画倫理機構)による極めて厳格な審査を経て、大幅な修正やぼかし(フォグ処理)を施した上でようやく「R18+(18歳未満入場・鑑賞禁止)」指定での公開が認められた経緯があります。しかし、本作の上映禁止措置が単なるポルノグラフィへの規制と一線を画していたのは、そこに「反ファシズムの告発」という極めて強烈な政治的・芸術的主張が込められていた点です。倫理的な嫌悪感と芸術的価値の衝突は、表現の自由を巡る国際的な司法闘争へと発展しました。