本作が放送批評懇談会によるギャラクシー賞月間賞や向田邦子賞など、数々の栄誉に輝いた最大の要因は、脚本家・金子茂樹が構築した圧倒的に緻密な会話劇と、それを寸分の狂いもなく演じ切った俳優陣の技術力にあります。
当時の制作関係者やインタビュー報道によると、劇中の台詞はアドリブのように自然に聞こえるものの、そのほぼ全てが一言一句台本通りに構築されていたと明かされています。句読点の間、相槌のタイミング、食卓で物を食べる所作に至るまで完璧に計算し尽くされており、キャスト陣は膨大なリハーサルを重ねて本番に挑んでいました。
特に「すき焼きの肉の配分」「アイスコーヒーの淹れ方」「春海の中学生活」「光司の再就職」といった、日常の些細極まりないテーマから人間の本質や家族の歪みが浮き彫りになる構造は、金子茂樹脚本の真骨頂です。大事件が起きるわけではないのに、登場人物たちが喋っているだけで30分間一瞬も目が離せない脚本力は、テレビドラマ史に残る快挙と評されました。
また、要所で登場する豪華なゲスト出演者たちも作品のスパイスとなっていました。光司の後輩役として登場した間宮祥太朗や、営業先の取引先や周囲の人々として登場した実力派俳優たちが、岸辺家の特殊な空気に絶妙なリアリティと緊張感をもたらしていました。