絵画にとどまらず、エッセイ、装丁、数学や天文学の解説書に至るまで幅広い著作を残した安野光雅。その多彩なバックボーンは、教員時代に培われた「伝える工夫」と「知的好奇心の探究」に根ざしています。
1926年に島根県津和野町で生まれた安野光雅は、山口師範学校研究科を修了後、上京して小学校の美術教員として教壇に立ちました。数学や科学にも深い関心を寄せていた彼は、子どもたちに物事の本質をわかりやすく、楽しく教えるアプローチを日々模索します。この教育現場での経験が、後に『算数目まもり絵本』や『天動説の絵本』といった科学的知見を織り交ぜた名作群を生み出す土台となりました。
作家活動を本格化させてからは、国内外のブックデザインやイラストレーションで数々の賞を総なめにしていきます。1974年には『ABCの本』で芸術選奨新人賞を受賞。そして1984年、児童文学の最高峰とされる「国際アンデルセン賞 画家賞」を満場一致で受賞し、その名は国際的なアートシーンへ轟くことになりました。
その後も2012年に文化功労者に選定されるなど、日本の文化・芸術界を牽引する重鎮として生涯にわたり筆を握り続けました。