岸谷五朗のコマーシャル出演史を語る上で欠かせないのが、1990年代初頭から中盤にかけて放送されたサントリー「モルツ」のCMシリーズです。「うまいんだな、これが」というキャッチコピーとともに、当時の広告界に新風を吹き込んだこの作品で、彼は生ビールを心の底から愛おしそうに味わう等身大の男性像を熱演しました。舞台仕込みの豊かな表情筋と、嘘のない爽快な飲みっぷりは、バブル崩壊後の日本社会において働く世代の共感をダイレクトに獲得しました。
当時、CM好感度ランキングで常に上位を独占していたモルツシリーズでは、萩原健一や和久井映見といった豪華なCM共演者とのアドリブ感あふれる掛け合いが展開されました。広告代理店の制作現場証言によると、岸谷の起用理由は「型にはまった美男子枠ではなく、体温と人間臭さを15秒〜30秒で伝えられる圧倒的なフィジカルアクターだったこと」と評価されています。
また、医薬品や食品関連のCMでもその快活なキャラクターはいかんなく発揮されました。疲労回復を訴求する栄養ドリンクや胃腸薬のプロモーションでは、多忙な現代人を力強く鼓舞するメッセンジャーとして登用され、視聴者に「この人が勧めるなら本当に効きそうだ」と感じさせる説得力をもたらしました。