「あっさりして薄いから、アメリカンはカフェインも控えめだろう」と考える人は少なくありません。しかし、コーヒー豆の化学的変性を分析すると、同じ杯数や同じ豆重量で比較した場合、深煎りコーヒーよりも浅煎りのアメリカンコーヒーの方がカフェイン含有量が多くなるケースが一般的です。
この逆転現象が発生するメカニズムには、主に2つの科学的要因が関係しています。
第一に、カフェイン自体の熱安定性です。カフェイン分子の昇華点は約178℃とされていますが、通常の焙煎環境下では熱分解を受けにくく、焙煎が進んでも豆の中に安定して残留します。一方で、コーヒー生豆に含まれる水分、有機酸、糖分などは、フレンチローストやイタリアンローストといった深煎り工程(220℃以上)を経るにつれて大量に気化・熱分解し、豆自体の質量が15〜20%近く減少します。
つまり、「生豆1粒」あたりに含まれるカフェイン量は焙煎度によって劇的には変わりませんが、「10グラムの粉」を計量した場合、深煎り豆は1粒が軽くなっているため粒数が多く必要になる一方、浅煎り豆は水分や成分が残って重いため、粉の体積密度が高くなります。そして第二に、アメリカンコーヒーは1杯あたりの抽出湯量が多く(一般的なブレンドの120mlに対して200ml前後)、粉とお湯の接触面積および抽出水量が多いため、水溶性成分であるカフェインがより余すところなく液体へ溶出するのです。
農林水産省や全日本コーヒー協会の公表データおよび各種成分分析を総合すると、標準的な浸出液100mlあたりのカフェイン量は約60mg前後ですが、マグカップ(200ml)でゴクゴクと飲むアメリカンスタイルでは、1杯で120〜140mg相当のカフェインを摂取することになります。夕方以降や就寝前に「薄味だから胃に優しいだろう」と油断して飲むと、覚醒作用によって睡眠リズムを崩す恐れがあるため注意が必要です。