事件直後から最も世間の関心を集めたのは、「犯人はなぜ、縁もゆかりもない人々を狙ったのか」という秋葉原通り魔事件の犯行動機でした。公判記録や本人の供述によって明らかになったのは、精神的な居場所を求めて異常なまでに依存していた「携帯電話専用のネット掲示板」を巡る孤独と憤りです。
加藤は事件当時、派遣社員として自動車工場に勤務していましたが、私生活では現実の友人が極めて少なく、携帯のネット掲示板に日常の感情や愚痴を頻繁に投稿していました。当時の捜査資料によると、掲示板内で自身を認知してもらうことに強い承認欲求を抱いていたものの、次第に「なりすまし」の出現や他の利用者からの無視・煽り行為に直面します。
自身が唯一の心の拠り所としていたネットコミュニティを荒らされ、孤立感を深めた加藤は、「掲示板の人間に自分の存在を思い知らせる」「現実社会を巻き込んで大事件を起こせば全員が注目する」という歪んだ報復心と自己顕示欲を暴走させました。事件当日の朝から犯行直前に至るまで、トラック移動の状況や心情をネット掲示板へリアルタイムに書き込み続けた事実は、ネット越しの視線を強く意識した犯行であったことを冷徹に物語っています。