アジのなめろうの輪郭を決めるのは、魚の脂を包み込む「味噌の塩気・コク」と、臭みをマスキングして後味を引き締める「薬味の清涼感」の調和です。調味料を目分量で合わせてしまうと、味噌の塩分が勝って魚の甘みが消えるか、逆に薬味が多すぎて青臭さが強調されるかのどちらかに傾きます。
料理人たちが経験則から導き出した基本の配分が、アジ正味100g(小〜中サイズのアジ約2尾分、または刺身1柵)に対する黄金比です。
薬味の調合で最も重視すべきは、「水分を外から持ち込まないこと」です。大葉やミョウガを洗った後の水滴は、なめろうの食感を損なう大きな要因となります。洗った薬味はペーパータオルで挟んで完全に乾燥させてから、細かなみじん切りにします。
また、なめろうに合わせる味噌は、豆味噌のような渋みが強すぎる八丁味噌や、糖度が高い京都の白味噌よりも、中辛口の信州赤味噌やコクのある合わせ味噌が最も適しています。アジのイノシン酸と、米麹・大豆が発酵して生まれるグルタミン酸が結合することで、化学調味料を一切使わずとも、口に含んだ瞬間に強い旨味の相乗効果が立ち上がります。