アイスホッケーのアイシング(Icing)とは、自陣の守備ゾーン側から相手陣深くへパックを不用意に大きく打ち出す行為を制限するルールだ。具体的には、センターラインの手前(自陣側半分)から放たれたパックが、誰にも触れることなく相手側のゴールライン(赤色のライン)を通過した際に適用される。
なぜこのようなルールが存在するのか。その理由は、競技のスピード感とエンターテインメント性を担保するためだ。もしアイシングが存在しなければ、守備で追い詰められたチームは、ピンチになるたびに相手エンドへ力任せにパックを打ち込み続ける「時間稼ぎ」や「安全な逃げ」を乱発できてしまう。これでは攻守の激しい切り替え(トランジション)が失われ、試合が極めて単調で退屈なものになってしまう。アイシングは、守備側に「パスやパックキープによって自力で陣地を挽回すること」を義務づける構造的なブレーキの役割を果たしている。
アイシングが宣告されると、審判はただちにホイッスルを吹き、パックを放ったチームの自陣側エンドゾーンのフェイスオフスポットから試合を再開させる。相手ゴール前まで攻め込もうとした行為が裏目に出て、一転して自陣ゴール前での大ピンチを招くのがアイシングの厳しさである。