あのお馴染みの格好は、最初から完璧な形で存在していたわけではない。きっかけは番組内のアドリブや、共演者との突発的な掛け合いの中で生まれたささやかな身体反応だった。バカ殿様の衣装を纏い、威厳を示しながらもコミカルに翻弄される中で、相手を威嚇しつつ自身をお道化てみせるあの独特の引き締めポーズが型として定着していったのだ。
元々は志村本人が若い世代の流行や舞台上のアドリブを取り入れ、試行錯誤を重ねる中で削ぎ落とされたものだ。手の角度一つ、顎の突き出し方のミリ単位の調整にいたるまで、舞台裏では幾度となく検証が行われていた。身体一つで何百万もの人々を一瞬で笑顔に変える技の背景には、職人技とも言える緻密な間合いの計算が存在した。