アブ 噛む 理由の本質は、蚊と同様に「メス成虫が産卵に必要な高純度のタンパク質を摂取するための吸血行動」です。オスのアブは花の蜜や樹液のみを主食としており、人間を襲うことはありません。メスは人間やウシ・シカなどの哺乳類から放出される体温(36度前後)、二酸化炭素、皮膚の黒い陰影を赤外線・嗅覚センサーで感知し、吸血対象へ一直線に飛来します。
アブの口器構造は、蚊のような細いストロー状ではなく、外科手術用のメスに類似した上顎と下顎で構成されています。皮膚にとりつくと瞬時に表皮をハサミ状に切り裂き、溢れ出た血液をすする「毛細血管外吸血」を行います。この際、血液が凝固するのを防ぐために強力な抗凝固成分を含む唾液を傷口へ流し込みます。これが後述する強烈なアレルギー性炎症と激痒の原因となります。
一方で、ハチの攻撃は捕食ではなく100%「自衛と巣の死守」です。メスの産卵管が鋭利な注射針へと変化した毒針を持ち、針の基部にある毒嚢(どくのう)からヒスタミン、セロトニン、メリチン、ホスホリパーゼなどの生体破壊性毒液を一気に皮下へ注入します。アブ ハチ 毒性 比較において、アブには心肺停止を引き起こす毒素そのものは存在しないものの、ハチ毒は直接的に細胞膜を破壊し、最悪の場合は数分以内に血圧低下や気道浮腫を引き起こす劇毒となります。
なお、ハチの中でもアシナガバチ スズメバチ 違いを把握しておくことは現場での生存確率を高めます。アシナガバチは胴体が細長く、長い後ろ脚をだらりと垂らして比較的緩慢に飛行し、攻撃性も巣を直接刺激しない限り温厚です。対してスズメバチ(特にオオスズメバチ・キイロスズメバチ)は大型で直線的に高速飛翔し、巣に近づくだけでアゴを「カチカチ」と鳴らして警戒音を発し、ターゲットへ集団で執拗な追尾攻撃を敢行します。