阿部和重の近況を追うと、長編小説の構想を進めつつ、文芸誌やカルチャー誌でのエッセイ・映画批評、対談など多方面で独自の存在感を放っています。2019年に発表された超大作『オーガニズム』によって、足かけ十数年に及んだ「神町トリロジー」が完結したあとも、その創作意欲は衰える兆しを見せていません。
近年では、日本映画学校(現・日本映画大学)出身という特異な出自を活かした映像論や現代社会批評の執筆も多く、文壇の枠にとどまらない越境的なアプローチが際立ちます。SNSやネットメディア全盛の今、安易な即時性に流されず、膨大な資料調査と構成力に基づいた重厚なテキストを生み出し続けている点は、出版関係者からも極めて高い評価を得ています。