安浦刑事は、いわゆるスーパー警察官ではない。派手な銃撃戦もしなければ、犯人を派手な立ち回りでねじ伏せることもしない。酒に弱く、二人の娘には頭が上がらず、懐はいつも寂しい。
取調室で彼が差し出すのは、激しい詰問ではなく一杯の温かいお茶と、相手の弱さに向けた眼差しだ。追いつめられた容疑者の言い分を、遮らずに最後まで聞く。令和のビジネス書が説く「傾聴」などという小器用なスキルを遥かに超えた、泥にまみれた人間の受容。強権的なリーダーシップが嫌気される今、弱さを抱えたまま他者を包み込む安浦の佇まいは、理想の上司像としても静かな共感を呼んでいる。