太平洋を見下ろすロサンゼルス郊外の高級住宅街、ランチョ・パロス・ベルデス。事件の報せが入ったのは、真夏の陽光が照りつける日の午後だった。連絡が取れなくなったことを心配した知人が自宅を訪れた際、すでに伊良部秀輝は冷たくなっていた。42歳という、あまりにも早すぎる死だった。
現場に急行したロサンゼルス郡検視局が作成した検視報告書には、争った形跡はなく、自ら首を吊って命を絶った事実が淡々と記されていた。家の中は整然としており、突発的な衝動というよりは、極限まで張り詰めた糸が音を立てて切れてしまったかのような静寂が漂っていたという。アルコールや薬物の過剰摂取に逃げることもなく、自らの意志でこの世を去った怪物の最期は、駆けつけた捜査員たちにさえ深い哀切を抱かせた。