清純派アイドルとして頂点に立った彼女が、お茶の間の人気を不動のものとしたのが、フジテレビ系のバラエティ番組『志村けんのだいじょうぶだぁ』へのレギュラー抜擢でした。当時の芸能界において、正統派女性アイドルが本格的なコント番組で泥まみれになることは極めて異例の挑戦でした。
しかし松本典子は、志村けんさんや田代まさしさん、桑野信義さん、石野陽子(現・いしのようこ)さんら錚々たる面々に囲まれながら、スイカの早食いや変顔、夫婦喧嘩のコントに至るまで、驚くべき反射神経とコメディセンスを発揮しました。単なる「お飾り」ではなく、本気で笑いを取りにいくその姿は「バラドル」の先駆けとして老若男女から絶賛を浴びました。
志村けんさんは生前、インタビューで「典子は勘が良くて間の取り方が天才的。こちらの意図を瞬時に察してリアクションを返してくれた」と高く評価していました。志村さんの笑いは徹底したリハーサルと計算されたタイミングの上に成り立つプロの職人芸でしたが、松本典子はその過酷な現場で鍛え抜かれ、志村さんを生涯の恩師として敬愛し続けました。2026年春の志村さんの急逝に際しても、報道各社に寄せられた彼女の追悼コメントには、深い哀惜の念とともに、若き日に注いでくれた温かな指導への偽らざる感謝が溢れていました。