家庭で春巻きを作る際、最も多くの人が直面するのが「揚げたては良くてもすぐにフニャフニャになる」「揚げている最中に皮が破れて油が濁る」というトラブルです。料理研究家や食品科学の知見によれば、春巻きの皮パリパリに仕上がる理由は、製造段階で一度加熱処理が施され、デンプンが完全にアルファ化(糊化)している点にあります。
餃子やワンタンの生皮とは異なり、市販の春巻きの皮は蒸熱処理によって生地のネットワークが一度固定されています。油に投入された瞬間、内部のデンプン構造が急激に水分を放出し、ミクロレベルの気泡を形成しながらガラス転移状態(硬化)を迎えるため、あの独特の心地よいクリスピー感が生まれます。
一方、調理現場で多発する失敗の原因は極めてシンプルです。春巻きの皮破れる失敗を防ぐ方法として、プロが実践する鉄則は以下の3点に集約されます。
第一に「具材の完全冷却」です。温かい餡をそのまま包むと、蒸気が皮の内側にこもってグルテンをふやけさせ、油に入れた瞬間の水蒸気爆発を引き起こします。第二に「巻き込み時の空気抜き」です。皮と具の間に隙間があると、加熱膨張した空気が逃げ場を失い皮を破断させます。そして第三が「160度前後の低温スタート」です。いきなり高温の油に入れると表面だけが焦げて水分が抜けきらず、具材の水分が逆流して皮をふやかしてしまいます。
春巻きの皮揚げないヘルシー調理法|油の後処理をゼロにする技術
油を大量に使いたくない、後片付けの手間を最小限に抑えたいというニーズに応えて支持を広げているのが、春巻きの皮揚げないヘルシー調理法です。フライパンに大さじ2杯程度の油を引いて転がしながら焼く「揚げ焼き」、もしくは刷毛で皮の表面に薄くごま油やオリーブオイルを塗り、200度のオーブントースターで約5〜7分加熱する手法が極めて効果的です。
油で揚げる場合に比べて脂質摂取量を約40〜60%カットできるだけでなく、トースター調理なら調理器具の油汚れも生じません。ポイントは、皮の表面全体にオイルの油膜をムラなくコーティングすることです。油が塗られていない部分は水分が抜けず、白く粉っぽさが残ってしまうため、刷毛やオイルスプレーを活用するのが美しい焼き色に仕上げる秘訣です。