映画『ソドムの市』上映禁止の真相と配信状況|狂気とパゾリーニ暗殺の謎の重要ポイントをご紹介します。専門的な知識が満載です。

物語の舞台は1944年、ナチス・ドイツの傀儡国家として北イタリアに樹立された「サロ共和国(イタリア社会共和国)」。退廃と敗色が濃く漂うなか、地域を牛耳る4人の支配者たちが結託し、親衛隊を使って美しく若い男女16人を拉致します。彼らは人里離れた豪邸に籠城し、外部から完全に隔絶された空間で、狂気と規律に満ちた120日間の背徳の宴を開始します。

パゾリーニ監督は、18世紀にマルキ・ド・サドが獄中で執筆した未完の奇書『ソドム百二十日』をベースにしつつ、全体の構成をダンテの『神曲』地獄篇になぞらえて4つの章に分割しました。

  • 地獄の前庭(Anteinferno):支配者たちによる厳格な規律の制定と、拉致された少年少女たちの選別の儀式。
  • 変態の環(Girone delle Manie):娼婦たちによる倒錯した体験談の朗読に合わせ、支配者たちが若者たちに屈辱的な性的奉仕を強要する。
  • 糞尿の環(Girone della Merda):人間としての尊厳を奪うため、強制的に排泄物を口に運ばせる儀式が行われる、本作屈指のトラウマシークエンス。
  • 血の環(Girone del Sangue):規律を破った者や支配者の気まぐれによって、若者たちが中庭で頭皮を剥がれ、舌を抜かれ、眼球を抉り取られて処刑される最終段階。

映画の結末は、凄惨の極みです。支配者たちが豪邸の二階の窓から双眼鏡を使い、中庭で繰り広げられる若者たちの拷問・虐殺劇を無表情に代わる代わる観察します。そして背後では、ラジオから陽気なダンス音楽が流れ出し、若い親衛隊の兵士二人がステップを踏みながら「君の彼女の名前は何ていうの?」と他愛もない日常会話を交わして幕を閉じます。命の剥奪が完全な「日常の作業」へと無機質に転落するこのラストシーンこそ、映画史上で最も救いのない幕切れと称されています。