本作の最大の魅力は、固定された一人の主人公ではなく、4人それぞれの視点から物語が多角的に描かれる点にある。ひかり、美月(麻里)、大谷、朝霧。彼らの視点が切り替わるたびに、読者は新たな「片想いの真実」を目撃することになる。
ひかりは大谷に惹かれ、大谷は麻里を目で追い、麻里は朝霧に心を寄せる。そして朝霧は……。この一方通行の矢印が綺麗に一周することなく、歪に絡み合う様子は、まさに青春の不条理そのものだ。誰かの「横顔」を見つめることは、同時に自分自身が誰かに背を向けられているという痛みを伴う。この二面性の描写が極めてリアルだ。