忠勝の武名を語る上で欠かせないのが、天下三名槍の一つに数えられる「蜻蛉切(とんぼきり)」である。穂先に止まった蜻蛉が自らの重みで真っ二つに切れたという伝説を持つこの名槍は、室町時代の刀工・村正一派の手による傑作だ。
注目すべきは、その圧倒的な機能美と実戦性にある。現存する資料によれば、蜻蛉切の刃長は一尺四寸四分(約43.7cm)。槍としては身幅が広く、刺すだけでなく「斬る」「叩く」動作にも耐えうる頑強な構造を誇っていた。しかし、忠勝はこの長大な得物を生涯同じ形で使い続けたわけではない。晩年、体力の衰えを自覚すると、柄の長さを自らの身体能力に合わせて切り詰めたという記録が残されている。武器に自らを合わせるのではなく、自身のフィジカルに合わせて躊躇なく道具を最適化する。そこに妥協なきリアリスト・忠勝の真骨頂が見て取れる。