権力者が自らの立場を利用して性暴力を繰り返す構図は、決して突発的な出来事ではない。その象徴とも言えるのが、映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインを中心とした一連の事件だ。彼が率いたザ・ワインスタイン・カンパニーでは、長年にわたり数多くの俳優やスタッフが被害に遭いながらも、その声は組織の強大な影響力によって握りつぶされ続けた。
この巨大な壁に風穴を開けたのが、ニューヨーク・タイムズ紙の記者たちの粘り強い取材と、ジャーナリストのロナン・ファローによる徹底した追及だった。映画『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』でも描かれた通り、調査報道メディアの執念がなければ、組織的な隠蔽体質は今もなお温存されていたに違いない。
問題の本質は個人の凶行にとどまらない。幹部や法務担当者、果ては業界全体が「売れる作品を作る男だから」と見て見ぬふりをした共犯関係こそが、真の元凶だ。沈黙は暴力と同義である。この教訓は、海を越えたすべての組織に重い問いを投げかけている。