多くの描写が現実とリンクした一方で、作品内には現実化していない「未回収の予言」も数多く存在します。作中の年表と現実の歴史を照らし合わせると、私たちが回避できた、あるいは今後直面するかもしれない不穏な未来像が浮かび上がってきます。
作中における第三次世界大戦の経緯は、1988年に東京へ新型爆弾が投下されたことを発端として、瞬く間に世界主要都市へ戦火が拡大したと設定されています。現実の歴史では幸いにも世界大戦は回避されましたが、地政学リスクの高まりや核の脅威が再燃する2026年代の国際情勢を見ると、大友氏が描いた「均衡の崩壊」に対する恐怖は、決して過去の遺物とは言い切れません。
また、政治への不信感から新興宗教やカルト的集団へ傾倒する民衆の姿や、税制改革に反対する過激なデモ隊の暴徒化など、社会心理の側面においては、現代のグローバル社会が抱える分断の危機と驚くほど重なる部分を残しています。