SNSや健康系コミュニティでは、「アドソンテストを自分で試したら脈が消えた、手術が必要かもしれない」といった過度な不安の声が散見されます。しかし、ここには徒手検査における極めて重要な盲点があります。
実は、健常者であってもアドソンテストで脈拍が減弱・消失する「偽陽性」が約10〜20%前後の割合で発生することが医学研究や臨床統計で広く知られています。解剖学的に血管の走行がわずかに浅い人や、もともと血管が筋肉に挟まれやすい骨格の持ち主であれば、無症状であっても深呼吸と首の回旋だけで脈が一時的に止まる現象は珍しくありません。
脈拍の減弱だけで直ちに病気と決めつけるのは早計です。臨床上、真に有意な陽性と判断されるのは「日常的に悩まされている特有のしびれや放散痛が、検査肢位によって完全に再現された場合」に限られます。セルフチェックだけで自己判断を下し、誤ったストレッチなどで首を無理にひねると、かえって神経を傷めるリスクがあるため注意が必要です。