ネット上のレシピ動画などで「簡単」と紹介されていても、実際にやってみると身がボロボロになったり生臭さが残ったりすることがあります。現場取材で見えてきた失敗の3大原因を解き明かします。
第一の盲点は「捌く途中で何度も水洗いしてしまうこと」です。内臓を出した後に身を水にさらすと、浸透圧によって白身が水分を吸い、繊維がふやけて包丁に引っかかりやすくなります。水洗いは「内臓を出した直後の1回のみ」に留め、その後は清潔なペーパーでまな板の水分を拭き取りながら作業するのが鉄則です。
第二の盲点は「包丁をノコギリのように往復させてしまうこと」です。キスの身は非常に柔らかく繊細です。刃元から刃先までを大きく使い、手前へスーッと一度で引くように刃を滑らせることで、身割れを防ぎ断面を滑らかに仕上げることができます。
第三の盲点は「腹膜の黒皮や血合いの残存」です。「キスは白身だから臭みがない」と思われがちですが、内臓を包む薄い腹膜や背骨沿いの血合いが残っていると、加熱時に独特の泥臭さや生臭さへと変わります。このわずかな汚れを指先やブラシで完全に取り除くかどうかが、プロの味と素人の味を分ける決定的な境界線となります。