劇場公開を第一とする伝統的なハリウッドの構造に風穴を開けたのが、動画配信サービスの存在だ。なかでもNetflixやApple TV+といったプラットフォームは、莫大な制作費とキャンペーン資金を惜しみなく投入し、賞レースの主役へと躍り出た。Apple TV+が『コーダ あいのうた』で配信サービス初となるアカデミー賞作品賞を獲得して以来、各社は自社コンテンツの権威付けと会員獲得の切り札として賞の獲得を掲げている。
配信事業者が推し進める独占配信戦略は、劇場での上映期間(ウィンドウ)を巡って映画館チェーンとの軋轢を生みつつも、映画制作の多様性を大きく広げた。名だたる巨匠たちに自由な表現の場と潤沢な予算を提供することで、従来のスタジオシステムでは企画が通りにくかった野心作が次々と賞レースの最前線に送り込まれている。