本作を楽しむ上で欠かせないのが、テレビドラマ版と水城せとなによる原作漫画の結末の違いです。ドラマ放送当時、原作漫画はまだ連載中(最終巻は2015年発売)だったため、ドラマ版はオリジナルのエンディングへと舵を切りました。
ドラマ版のラストでは、サエコさんは夫・吉岡幸彦との現実に向き合い、家庭へと戻る選択をします。爽太はサエコさんという「ミューズ(創作の源泉)」を失ったことで一度はショコラを作れなくなるものの、自らの足でショコラティエとして再び歩み出す決意を固め、パリへと旅立ちます。お互いが幻想から抜け出し、大人として自立していくビタースイートな着地でした。
一方の原作漫画では、爽太の内面的な葛藤やサエコさんの孤独、そして各登場人物の心理がより深く、ダークかつ現実的に描かれています。爽太がサエコさんという偶像を完全に脱ぎ捨てる過程や、サエコさんが選んだ人生のリアリティは、漫画ならではの重厚な読後感を残しました。両者を比較することで、作品が持つ多面的なテーマ性をより深く味わうことができます。