本作が「涙なしには観られない」と絶賛される最大の理由は、単なるお涙頂戴の動物映画にとどまらない点にある。失職、離婚、病魔……人生の坂道を転がり落ちていく「おとうさん」と、どんな境遇になっても彼を愚直に愛し続けた愛犬ハッピー。二人の旅路は、客観的に見ればあまりにも過酷で切ない。
しかし、ハッピーの視点から描かれる世界には、哀れみや悲壮感がない。大好きな「おとうさん」と一緒にいられること、それ自体が幸福のすべてだったのだ。村上たかしが原作漫画で描き出したこの静かな視点は、観客に「本当の幸せとは何か」を鋭く突きつける。どん底の絶望の中で描かれる無条件の愛こそが、観る者の涙腺を崩壊させる最大の要因だ。