かつて「料理研究家」といえば、格式高い懐石や手の込んだフランス料理を優雅に教える存在だった。その固定観念を爽快な笑顔と圧倒的なスピード感で破砕したのが小林カツ代だ。彼女の生み出すレシピは、徹底的な現場主義に基づいている。計量スプーンを何回も洗わずに済む手順や、フライパンひとつで完結する調理法。それらはすべて、幼い子供を抱えながら多忙な日常を駆け抜けた彼女自身の切実な実体験から生まれたものだった。
知られざる裏話として、彼女のスタジオであり現在もその志を継承する株式会社KATSUYOでは、レシピひとつを世に出すまでに途方もない試作が繰り返されていたという。「誰が作っても、何度作っても絶対に失敗せず美味しくなること」。この妥協のない検証作業があったからこそ、彼女の時短テクニックは単なる手抜きではなく、働く世代の「リアルな救い」として、時代を超えて支持され続けているのだ。