麻生氏のスタイルが国境を越えて決定的なセンセーションを巻き起こしたのは、2013年モスクワG7財務相・中央銀行総裁会議でのことだった。極寒のモスクワ空港に降り立った麻生氏は、毛皮の襟がついたロングコートに身を包み、黒の中折れ帽を斜めに深く被ってタラップを下りてきた。
その姿は瞬く間に海外メディアのカメラを捉えた。米国の有力紙やネットメディアはこぞってこの姿を報じ、映画『ゴッドファーザー』の登場人物や往年のギャングスターを彷彿とさせると大々的に取り上げた。X(旧Twitter)上でも世界規模でミーム化され、「本物のダンディが現れた」「日本の政治家がこれほど強烈なビジュアルを持つとは」と驚嘆の声が吹き荒れたのである。
無難であること、目立たないことが美徳とされがちな国際外交の場において、この装いは冷徹なまでの自己主張だった。計算された劇場型ファッションでありながら、決して借り物ではない風格が漂っていたからこそ、世界は息を呑んだのだ。