井上貴博という表現者を語る上で欠かせないのが、慶應義塾の環境で培われた濃密な青春時代だ。幼稚舎から慶應に通う生粋の慶應ボーイでありながら、その実像はスマートなエリート像とは程遠い泥臭さに満ちている。特に慶應義塾高等学校から慶應義塾大学へと進む中で打ち込んだ野球部での経験は、彼の骨格を形成した。
大学時代、選手としての限界を察知した彼は学生スタッフ・マネージャーへと転身した。裏方としてチーム全体を俯瞰し、選手のモチベーションを支え、組織を円滑に回すための調整に奔走した日々。自らが主役に立つのではなく、周囲を活かすために汗を流したこの経験こそが、後に民放テレビ放送業へ進み、スタジオのアンカーとして全体をコントロールする卓越したキャスター能力の原点となった。