JA共済における自爆営業は、個々の支店の暴走でも、現場職員の怠慢でもありません。農業協同組合という組織が長年抱え続けてきた「構造的赤字の補填モデル」にこそ、根本的な原因が存在します。
日本の農業人口が急速に減少し、主業である営農・販売事業が恒常的な赤字に陥るなか、JAグループ全体の経営を支えてきたのは信用事業(JAバンク)と共済事業(JA共済)が叩き出す莫大な金融収益でした。特に共済事業の手数料収入は単協の生命線であり、この収益目標を達成し続けなければ組織の存続すら危ういという強迫観念が上層部に定着していたのです。
さらに問題を深刻化させたのが、「全職員推進」と呼ばれる独特の悪習です。共済の専門知識を持たない営農指導員や一般事務職、さらにはガソリンスタンドの給油スタッフに至るまで一律に共済獲得のノルマが課されていました。門外漢の職員が親族や知人に頭を下げ尽くした果てに行き着く先が、自らの身銭を切る「自爆」だったというわけです。
ここには、日本の閉鎖的組織に特有の心理的安全性(Psychological Safety)の欠如と強固な同調圧力が作用しています。減点主義の人事評価のもとで「未達者は裏切り者」という無言の圧力をかけられ、逃げ場を失った職員たちは、サンクコスト効果によって自爆を繰り返す負のスパイラルに呑み込まれていきました。