当時の報道各社のアーカイブ記録や関係者の証言を振り返ると、中江滋樹を取り巻く狂乱ぶりは常軌を逸していました。銀座の超高級クラブ街では、毎夜のように札束が飛び交い、関係者への謝礼として数百万円単位の現金が紙袋で手渡されていたと伝えられています。
捜査関係者の証言によると、中江は自らを演出するための一流の舞台装置を整えていました。当時のトップアイドルとの交際が噂され、政界の有力議員や大物フィクサーとの親密な関係を誇示することで、一般投資家に「この男の背後には国家レベルの特権情報がある」と信じ込ませたのです。
公判記録や手記において、ある被害者は次のように述べています。
「地方の主婦や中小企業の経営者が、老後の蓄えや退職金を差し出した。誰もが『あの風雲児の推奨銘柄なら絶対に損をしない』と信じ切っていた。だが手元に残ったのは、何の価値もない無効な預り証の紙切れだけだった」
SNSや掲示板などで昭和の事件を検証するスレッドでも、「なぜあんな初歩的な集金話に騙されたのか」という疑問が今なお投げかけられます。しかし、当時の高成長経済がもたらした「株価は右肩上がりに上がり続ける」という過信と、メディアを駆使した中江のカリスマ性が結びついた結果、正常なリスク判断能力が麻痺していた現場の実態が浮かび上がります。