アルコールマスクという言葉を初めて聞く読者も多いだろう。これは特定の製品名ではなく、「マスクの表面にアルコール消毒液を吹きかけて使う」という行為、あるいはそのように加工されたマスクを指すネットスラングだ。発端は2026年春、マスク不足が深刻化した時期にさかのぼる。当時、SNS上で「マスクが手に入らないなら、持っているマスクにアルコールを噴霧して再利用すればウイルスを殺せる」という投稿が拡散。動画サイトでは実際にスプレーを吹きかける様子を撮影した投稿が相次ぎ、関連動画の再生回数は短期間で数百万回に達したと報道各社が報じている。
しかし、この行為が医学的に裏付けられたものではないことは当時から明確だった。WHO(世界保健機関)や日本の厚生労働省は、マスクへのアルコール噴霧を推奨していない。むしろ「アルコールはマスクの素材を劣化させ、フィルター性能を低下させる」という注意喚起を繰り返してきた。それでも「アルコールで消毒すれば安心」という直感的な分かりやすさから、誤解とデマが混ざり合いながら拡散が続いた。2026年に入っても、季節性インフルエンザの流行期や新たな変異株のニュースが出るたびに、このキーワードの検索数が一時的に跳ね上がる傾向が確認されている。