本作の元ネタについて、ネット上では「単なるグリム童話の翻案」あるいは「残酷描写を売りにした都市伝説系コンテンツ」と短絡的に捉えられるケースが少なくありません。しかし、歴史民俗学および童話の変遷史を照らし合わせると、より根深い構造が見えてきます。
1812年に初版が刊行されたグリム童話『ヘンゼルとグレーテル』は、当時のヨーロッパを襲った大飢饉という過酷な歴史的事実を背景に持っています。親による子捨て、食料を巡る肉親間の争いという生々しいリアリズムが、版を重ねるごとに「悪い継母」という身代わりを用意することで道徳的な物語へと美化されていきました。
『メルヘンとグレーテル』が暴き出しているのは、まさにこの美化される前の「人間本来のエゴイズム」です。継母や魔女という外部の悪者を排し、肉親・兄妹間の内的な執着に焦点を当て直した点こそが本作の独創性であり、単なるグロテスク趣味とは一線を画す文化的批評性を持っています。