脳の底部、間脳の下面を取り囲むように存在する環状の動脈吻合(ふんごう)をウィリス動脈輪と呼びます。脳血管の解剖生理学において、この構造は人体の最も優れたリスクヘッジ機構のひとつに位置づけられています。
脳に血液を送るルートは、大きく分けて首の前側を通る「左右の内頸動脈(前頭葉・頭頂葉・側頭葉の大部分を栄養)」と、首の後ろ側の頚椎を通る「左右の椎骨動脈から合流した脳底動脈(小脳・脳幹・後頭葉を栄養)」の2系統が存在します。これら独立した2大血管網が脳底で合流し、環状につながり合っているのがウィリス動脈輪の基本的な仕組みです。
もしこの環状ネットワークが存在せず、血管が一本の行き止まり(終動脈)構造のままであれば、どこか1箇所が血栓などで狭窄した瞬間にその先の脳細胞は壊死してしまいます。ウィリス動脈輪という相互接続バイパスがあるおかげで、左右や前後の血圧差を利用した血流の融通が可能になり、脳全体の恒常性が維持されています。