「尾の断面を見れば、そのマグロが生前にどんな泳ぎをし、どんな餌を食べていたかがわかる」。山崎康弘氏のこの言葉が象徴するように、仲卸の真骨頂は競り落とす瞬間の判断力にある。色艶、脂の乗り、身の締まり、そして最も重要な「香り」。これらを瞬時に見極める職人の経験値こそが、他店の追随を許さない仕入れの精度を生み出している。
さらに、買い付け後の品質保持にも徹底したテクノロジーが投入されている。マイナス60度の超低温冷凍庫による組織破壊を防ぐ急速凍結や、チルド状態での精密な温度・湿度コントロール。これにより、水揚げ直後の鮮度と旨味成分(イノシン酸)の熟成バランスが最適な状態で保持される。最高峰の江戸前寿司店がこぞって山治のマグロを指名するのは、包丁を入れた瞬間に広がる芳醇な香りと、口内で滑らかに溶ける脂の質が完璧に維持されているからにほかならない。