赤字や炎上のリスクを冒してまで、なぜ集客力に見合わないアーティストが武道館公演を決行するのでしょうか。その背景には、興行単体の収支を超えた「アーティストのブランディング(箔付け)」という音楽ビジネスの思惑が存在します。
「日本武道館単独公演成功」という実績は、音楽業界において依然として絶大な効力を持ちます。武道館のステージに立ったという既成事実があれば、その後のフェス出演枠の確保や、テレビ番組・メディア出演時の紹介肩書、さらには自治体や大手企業タイアップの獲得難易度が劇的に下がります。所属事務所にとっては、多少の空席や当日券の割引、あるいは赤字興行になったとしても、今後のビジネス展開を見据えた「投資」として割り切って開催される事例が少なくありません。
また、武道館の使用申請は1年以上前から行われるため、予約時点での勢いと開催当日の人気にズレが生じ、結果として集客が追いつかなくなるというタイムラグの弊害も指摘されています。