近年のステージを聴いて驚かされるのは、音数の凝縮された美しさだ。若い頃のような圧倒的なスピード感や技巧的なフレーズも魅力的だったが、今の彼の演奏には一音一音に途方もない重みと余白が存在する。無駄な音を削ぎ落とした先にあるのは、メロディの純粋なエッセンスだ。
バックステージで話を聞くと、彼は少年のような笑顔でこう語る。「まだ納得のいく音が出ない日もあるんだよ。毎日楽器を触るのが楽しくて仕方がない」。90代を迎えてなお、己の表現を突き詰める姿勢には感服するしかない。完璧を求めて妥協しないクラフトマンシップが、そこにはある。