日本国内における高齢出産のリアルな到達点はどこにあるのか。公的に知られる国内最高齢出産記録としては、60代での事例が報告されている。とりわけ、長野県下諏訪町の諏訪マタニティークリニックで院長を務める根津八紘医師の取り組みは、日本の生殖医療界に一石を投じ続けてきた。
根津医師は、海外での卵子提供を受けた高齢女性の出産を国内で引き受けるなど、タブー視されがちだった領域に踏み込んできたパイオニアだ。命の誕生を切望する女性たちの切実な思いに向き合う一方で、超高齢での妊娠・出産が母体にかける生命の危機や、産科現場の緊迫感を誰よりも深く知る医師でもある。国内の現実は80代などという非現実的な領域ではなく、50代後半から60代という限界線上で医師たちが命懸けの医療を提供しているのが実態だ。