なぜ7月16日が記念日となったのか。その答えは、宇都宮の地に開業したばかりの駅ホームにある。当時、日本鉄道の開通に合わせて構内販売を買い出でた旅館「白木屋」が、握り飯を竹皮に包んで乗客へ買い求めたのが起源とされる。大都市の高級料亭ではなく、地方の旅籠から始まったという事実は、日本の食の歴史において極めて興味深い。
もっとも、駅弁の起源については諸説が存在する。明治10年の神戸駅や上野駅を始祖とする主張もあるが、宇都宮説が広く定着したのは「おにぎり2個とたくあん」という明確な献立の記録が残っているためだ。質素でありながら持ち運びに適した合理的なパッケージングは、現代のテイクアウト文化の原点ともいえる。手拭いで包み、声を張り上げて立ち売りする売り子の姿は、明治の鉄道風景を象徴する風物詩となった。