もう一つの見逃せない潮流が、温度そのものを下げた「冷製アプローチ」の進化だ。
かつては油脂が白く固まるためタブーとされていた冷やしカレーだが、植物性オイルと和風の削り節出汁、あるいは昆布水をベースに仕立てる技法が確立された。冷蔵庫でしっかりと冷やしたトマトベースのスパイシースープを、冷水で締めた麦飯や素麺の上から惜しみなく注ぎ、焼き浸しにした冷たいナスを添える。
喉を滑り落ちる氷のような冷たさと、喉奥からじんわりと立ち上がってくるスパイスの温熱効果。この温度差のコントラストが、酷暑に疲弊した脳を心地よく覚醒させる。