「リアカーなんて、見たこともない」
都内の私立高校に通う受験生はそう言って苦笑する。昭和から平成にかけて日本の化学教育を支配してきた語呂合わせ、「リアカー(Li:赤)無き(Na:黄)K村(K:赤紫)、動力(Cu:緑)借りるとう(Ca:橙)に努力する(Sr:紅)もくれない(Ba:黄緑)馬力」。この呪文のようなフレーズが、令和の教室では徐々にその支持を失いつつある。
言葉の意味がイメージしにくい古典的な語呂合わせは、かえって脳のメモリを無駄遣いするという指摘も多い。リアカーという実物を見たことがない世代にとって、それは単なる「無意味な音の羅列」に過ぎないのだ。言葉の壁が、暗記のハードルを上げてしまっている現状がある。