近年の熊本県における最低賃金改定理由を語る上で欠かせないのが、TSMCの第1工場稼働および第2工場建設に伴うメガ投資の影響です。半導体サプライチェーン企業の集積により、菊陽町や合志市、大津町を中心とするエリアでは、製造・物流・建設などあらゆる職種で求人倍率が急上昇しました。
この動きは地域別最低賃金の大幅な引き上げを後押しする決定打となりました。従来、地方の最低賃金審議では「企業の支払い能力」を懸念する使用者側と、「物価高騰への対応」を求める労働者側で激しい対立が生じがちでしたが、熊本においては「他産業や半導体関連に人材が流出してしまう」という構造的危機感が労使共通の課題となったためです。
TSMC関連工場での派遣時給が1,800円〜2,000円以上に達するケースも珍しくなく、近隣のコンビニや飲食店、スーパーのパート・アルバイト募集でも時給1,200円〜1,400円超を提示する店舗が続出しました。こうした民間相場の急騰が、公的な最低賃金を引き上げる強力なエンジンとして機能しています。