2006年2月、京都の桂川河川敷で発生したあの夜の出来事を、多くの人が今も鮮明に記憶している。認知症の母を車椅子に乗せ、最後の親孝行として京都の街を巡った末の心中未遂。生活保護の申請も却下され、所持金はわずか数百円だった。首を絞める息子に対し、母が放った「もうええ、一緒に死のう」という最期の言葉は、あまりにも残酷で、あまりにも切ない。
裁判で裁判官が「決して自ら命を絶つようなことはしないでください。生きていてほしかった」と涙ながらに執行猶予付きの判決を言い渡した場面は、司法の温かさとして語り継がれた。だが、エモーショナルな物語として消費するだけで終わらせてはならない。この事件の本質は、個人の困窮ではなく、社会保障制度の機能不全にあったからだ。